遊びの読書

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本と漫画を読みながら、考えごとをまとめるブログ

『きのう何食べた?』の面白さ、その魅力を解説

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4月から『きのう何食べた?』のドラマが始まりましたね。

 

人に勧めたくなるほど面白いドラマの一つですが、同時にとても勧めにくい作品でもあります。

 

漫画から好き、もしくはたまたま見始めてハマったはいいけれど、

「劇的な展開がないから上手く面白さを伝えられない!」と悩んでいませんか?

 

日常漫画って魅力を伝えるのが本当に難しいですよね。

 

また、BLっぽいから人に勧めにくい…と二の足を踏んでおられる方もいるのではないでしょうか。

 

そこで、「きのう何食べた?を人に勧めて一緒に語れる人を作りたい!でも上手く伝えられなくて困ってる」という方のために、この作品の魅力を4点に絞ってご説明します。

 

人に勧めようか迷っているという人も、一度目を通してみて下さると嬉しいです。

 

 

1 心地よい共感

 シロさんはゲイで、ケンジと一緒に暮らしている事も、両親にはカミングアウト済みです。

 

でもこの両親、その事実を理解していそうでしていません。

 

口では理解を示していて、実は本人もそう思ってます。

 

しかし、心の奥の方では息子がゲイであることを全然受け入れられていないんです。

 

そしてシロさんもそんな両親に対して、あきらめと、「それでもいつかは分かってくれるのでは」という期待を持っています。

 

でもこういうことは別にゲイに限ったことではありません。

 

違う人間だから分かり合えないことは当然です。

 

しかし親は分かってくれると無意識に期待している分、同じ言葉でも他の人に言われるより傷ついたりしますよね。

 

そんな人間関係が、可笑しくもリアルに描かれていて、全然違う状況のはずなのに共感があります

 

でも全く同じ状況なわけではないので、アレルギー反応もない、心地よい「わかる~」って感じなのです。

 

この距離感は得難いです。

 

2 豊かな暮らし

 「きのう何食べた?」のタイトル通り、料理のシーンがたくさん出てきます。

 

・友達の家に行ったり

・ご近所の台所を借りたり

・たまに外食したりもします。

 

でも基本的にはシロさんが料理をしてケンジと一緒に食べる場面が中心。

 

そんなシロさんの楽しみは「作り置きの鶏むね肉を使い切ること」。

 

安くなっている食材をハントして、冷蔵庫の残り物を思い出しながら献立を作る。

 

それをシロさんはとても楽しんでるんです。

 

例えば服をコーディネートするのも同じでしょうか。

 

生活を丁寧にできる人って、豊かだなあと思います。

 

お金をたくさん稼いで一流のレストランで外食をして、毎年ハワイに行く人は誰の目にも豊かと映るでしょう。

 

でもシロさん達はそんな人たちよりも、小さな幸せをきっとたくさん見つけています。

 

小さな幸せを見つけて楽しめる心があることを、豊かだなあと思うのです。

 

 

私は、料理も家事も服選びさえ煩わしいタイプなので、

 

「こういうものに私はなりたい」と宮沢賢治を召喚させながら読んでますがね。

 

3 なるようになる現実を毎日堅実に生きる

 

シロさんのご近所さんで、子供はいらないんだよねと言っていた夫婦がいます。

 

しかし予定外にも子どもができてしまいます。

 

産むと決めた娘に、母親が

「どうして産むことにしたのか」

そう尋ねた時の答えがとっても良かったんです。

 

シロさんもケンジもそうですが、彼らを囲む周りの人も、なるようになる現実をそれでもしっかり生きています

 

自分の思う通りに行かない

描いていた未来とは違う道を選ぶことになった。

 

そんな等身大の現実を前に、それでも毎日働いて、ご飯を作り、食べて生きている。

 

そんな人たちの言葉だからじんわり響きます。

 

4 これが愛

一緒に暮らしているゲイの2人の暮らしを見ていると、男と女じゃないからこそ「これが愛なのかな」と言うものが見えてきます。

 

自分の趣味でなくても相手に合わせてみたり、心のままを言うのではなく相手の望む言葉を先回りしたり。

 

相手にハッピーでいて欲しい気持ちが煩わしさよりいつもちょっと上回っている2人の暮らしが素敵です。

 

愛は目に見えないと言われますが、文章と絵で可視化された愛がここにあります。

「自分の心に正直に」なんて自分が気持ちいいだけですからね。

 

 『きのう何食べた?』がおもしろい理由まとめ

本当に事件らしい事件が起こらなくて、あえて挙げるなら

 

・いつも行ってたスーパーが潰れるとか

・スイカを丸々一個買って、半分こしたことをきっかけに近所の奥さんと仲良くなるとか(そこから不倫とかは始まらない。シロさんゲイだから。)

 

原作者のよしながふみさんは、きっととても目がいいんだと思います。

 

もちろんマサイ族的視力という意味ではなく、小さな幸せを感じる心を持っているという意味に近い方。

 

何気ない日常の中に、私たちが目もくれない小さなドラマと愛と楽しさがあることにちゃんと気づいて絵にして下さる。

 

それを見て、日常がいかにドラマチックであるかに気づかされるから、『きのう何食べた?』はこんなにも面白いのではないでしょうか。

 

私なりにこのドラマ、もとい漫画の面白さを分析してみましたが、本当にしみじみと面白いので余計な考えは不要です。

 

そしてこれを読むと料理したくてうずうずします。

 

得意料理は目玉焼きと卵焼きとゆで卵な私ですら気づいたらフライパンをふるっていましたからね。

 

この記事が、誰かに何食べをお勧めするきっかけになればとても嬉しいです。