遊びの読書

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本と漫画を読みながら、考えごとをまとめるブログ

【おすすめ本】コンビニ人間の次はこれ!「殺人出産」が面白い!自分の中の常識・固定概念をぶっ壊したい方へ

今回のおすすめ本は

村田さやかの『殺人出産』です。

 

初回の紹介がこれってどうなんでしょうか。

 

まあ気にせずに行ってみましょう!

 

本書の対象から外れる方

感動したいできる物語を探している。

没頭して夢中になる物語を探しておられる方も今回は回れ右。

 

他に最適な本がたくさんあります!!

 

こんな人におすすめ

・平凡な物語に飽きている。

 

・会社や学校の暗黙の了解に堅苦しさを覚えつつも、従順に生きている方。

 

・不快感の副作用をものともせず、自分の中の常識を壊したい方。

 

 

 

なぜこの本を取り上げたかと言うと、先日会社の式典がありまして。

 

何周年なんたらみたいなやつですね。

 

そこで社長と専務の二人と同じテーブルになりました。

 

出前のお寿司やピザを食べながら、専務が

「最近面白い本は読んだか」

と聞いてきたんです。

 

採用試験の時に趣味が読書という話をしたのを覚えて下さっているらしい。

 

そこで私は無難に話題書なんかを言えばよかったものを、気づけば馬鹿正直に最近読んで面白かった本を答えていたわけです。

 

「村田さやかの殺人出産です。」と。

 

一瞬落ちる沈黙。

 

慌ててコンビニ人間ご存知ですか?前に芥川賞で有名になった!あの作者さんの本なんですと説明します。

 

社長は本を読む人なので、ああ!となります。

 

「どんな話なの?」

 

「10人産めば1人殺してもいい法律ができた設定の話で、」

 

不幸なことに、ここで他の人が入ってきてこの話題が終わってしまったのです。

 

絶対危険分子だと思われた!

サディスティックなのを面白いと公言するやばいやつみたいになってる!

 

違うんです。その設定に「そうそう、そのシステム賛成!」という意味で面白いと感じたんじゃないんだ…

 

この本の面白さは別の所にあるんです!

 

という弁明をこの場を借りてさせて頂きたく、紹介したい次第です!

 

物語設定の違和感

この設定を聞いたとき感じ方は様々あると思います。あなたどう思われたでしょうか。

 

私は、おそらく専務たちと同じように、「なにそれ気持ち悪い」という嫌悪が先に立ちました。

 

殺人を法律で認めているところもそうですが、10人産むというのがもう違和感です。

 

1人の人間をお腹の中で作るまで十月十日かかるわけです。ざっと10年は出産に専念することになります。

 

※ちなみに未来の話なので技術発達により男性も子供を産めます。

 

そんな先行する感情を持ちながら物語に入っていきます。

 

簡単なあらすじ

未来の日本は少子化が進んでいます。

 

その点からも大変合理的にこの「殺人出産」システムは働いています(1人減っても10人増えるため)。

 

システム導入から数年が経っており、このシステムで生まれた子供も中学生くらいの年頃になっていて、社会はそれを受け入れています。

 

そこに、キーとなる女性が現れます。

 

彼女は、「殺人出産のシステムを間違っている」と感じています。

 

そして、「システム導入以前の正しい世界に直すのだ」と決意しており、周りを説得するのです。

 

同じ意見のはずの女性に対して違和感が湧く

本を開く前、設定を聞いて気持ち悪いと思った自分の意見と彼女の考えは、同じです。

 

しかしおかしなことに、同じ意見のはずの彼女に対して違和感を感じるのです。

 

ここがこの本の面白いところです。

 

嫌悪感を持っている読者であると同時に、目線はこの設定を普通として生きている主人公です。

 

殺人出産システムを受け入れている人の目を通して、自分と同じ意見の人間を見ると、なんとそれこそ嫌悪感の対象となるのです。

 

最初は受け入れがたかった設定のはずなのに、主人公目線でその世界で生きていると、だんだん殺人出産のシステムが正しいように思えてきてとても恐い。

 

それは、「条件付きで人を殺してもいい設定に、正しさを感じた」ことに対する恐さではありません。

 

自分が常識だと思っていたものに、全く根拠がないと気づかされるから恐いのです。

 

常識の正体

思えば今から200年前にはまだ切腹が名誉なことだと考えられていましたし、70年前には国のために死ぬことが当然でした。

 

自分が数年先の未来に生まれて、違う常識の元で生きていたら、2000年代の常識に違和感を持つと思います。

 

物語は大きな展開があり、そこにも驚かされるのですが、とにかく読後は自分が絶対正しいと信頼していた足場を、取り払われたような気分になります。

 

足場だったものは、今生きる自分の周りの人が作った幻想に過ぎないと知ります。

 

体が宙ぶらりんになる感覚を味わうこと必至です。

 

例えば

・会社に行って働くこと

・毎日学校に行き、小中高大と進んでいくこと。

 

自分が今まで何の疑問も持たずにこなしてきたことさえ、この足場の一例といえます。

 

もちろん人間は、その時代、所属する組織のルールの中で生きていかなければなりません。

 

しかし、それだけが唯一の常識ではないという考えは、視野を広げ、誰かを救うかもしれません。

 

この本は夢中になる面白さの本ではありませんが、読後の発想がとても柔軟になるという意味で断トツ面白い本です。

 

自分の常識をぶっ壊して宙ぶらりんを味わいたい、物好きな方。

 

気が合いますね。

 

信じていた常識が霧散する体験を、味わっていただければ嬉しいです。